HP委員の松崎さんより、最新のバイオマス通信が届きました。転載します。
[バイオマス通信]2007年10月8日
(財)高知県産業振興センターの松崎です。
件名:檮原町のバイオマス事業と
矢崎総業のペレット焚き冷暖房システム
高知県檮原町が矢崎総業(株)と共同で行う「木質バイオマス地域循環モデル事業」が、いよいよ10月から本格的に動き始めました。
来年3月までには、町内の森林組合の工場の隣に木質ペレット工場が完成し、年間600トンのペレット生産が始まります。ペレット生産は、2年目には1,200トン、3年目からは1,800トンの生産が予定されています。
ペレットの原料としては、製材の端材だけでなく、間伐材やタンコロなどの林地残材を使うということになっています。
ペレット工場の完成した時の利用先として、矢崎総業が新開発した木質ペレット焚きの吸収式冷暖房システム(アローエース)が、雲の上ホテルと南四国部品梼原工場に設置が計画されています。
矢崎のこの新システムは、既に昨秋の名古屋での展示会で公開されていましたが、その後も屋久島での実地テストなどを経て、いよいよ来年(2008年)から発売されることになり、今月5日に静岡県浜松市において見学会と説明会があったので、参加しました。北は北海道、南は九州から約60名もの参加者があり、期待の大きさを示しています。高知からも檮原町や県の関係者、土佐テックの中川社長も参加し、檮原町における事業の説明を行いました。
発売されるのは10RTと30RTの2種類ですが、今後より大型の機種を増やしていくとのことです。なお、RTは冷凍トンを表します。10RTで、事務所なら約300m2の面積を冷房でき、家庭用エアコン16〜20台に相当します。今のところ家庭での利用は難しく、ビル、事務所、ホテル、レストランなどが対象です。木質バイオマス利用の進んでいるヨーロッパでも冷房利用は実用化されていないので、世界で最初の本格的なバイオマス冷房システムの商品化と思われます。
アローエースというのは、矢崎総業が30年前から製造・販売している吸収式冷暖房システムの商品名ですが、これまではガスや灯油を燃料とするものが国内で5,000台程度使われているようです。今回のペレット焚きのものの価格は、従来品の1.5培程度ということですので、ペレットの供給が間に合えば広く普及することは間違いないと思われます。なお、ペレット消費量は、年間6,000時間稼働するとして、10RTのもので年間50トン程度です。
このところ、欧米ほどではないにしても、国内でも木質ペレットの生産工場が急激に増加しており、高知でも今年から来年にかけて数カ所でペレット生産が計画されています。しかし多くの場合、利用目的が農業ハウスなど暖房施設や建物の暖房・給湯施設であり、ペレット消費は冬季に集中します。特に高知のように暖房期間の短い地域では通年需要の確保のためにも夏期に使う冷房利用システムの開発が待たれていました。
矢崎総業では、梼原と高知市に技術者を常駐させて、建設と稼働にあたるほど、この事業に本腰を入れています。高知県から全国に、あわよくば世界に発信できる事業が成功するよう、協力していきたいと思います。梼原町における動きは、今後もこの通信で取り上げていきます。