Tuesday, October 02, 2007

バイオマスボイラの問題

HP委員の松崎さんより、最新のバイオマス通信が届きました。転載します。



[バイオマス通信]2007年9月30日
(財) 高知県産業振興センターの松崎です。

高知県がこの8月に、開発中であったハウス用バイオマス温水ボイラーの実用化断念 を発表したことは、開発に期待をかけていた施設農業農家などに大きな衝撃となりま した。

断念の理由は、燃焼機に使っているステンレス鋼が冒されて、基準を大幅に超える6 価クロムが溶出することが解決できなかったことによります。最もよく使われる耐熱 材料であるはずのステンレス鋼でも、高温下で多量の酸素、水、灰(強アルカリ性) に曝されると金属表面が冒されるということを、あらためて認識させられたといえま す。現在、クロムとニッケルを含まないステンレス鋼はありません。

調べてみますと、バイオマス先進国のスエーデンでは、既に10年以上前に、水分の高 い木質バイオマス燃料を使用すると、燃焼機表面が腐食されて6価クロムが形成され ることに気が付き、その解決に試行錯誤を続けているという報告が見つかりました。 燃料に硫黄分を混合するとか、ステンレス中の珪素やマンガンの割合を増やすとかが 提案されています。石炭や石油の燃焼機が比較的長持ちするのは、硫黄の膜がステン 表面を保護するからだそうです。2004年8月のNEDO海外レポートです。

http://www.nedo.go.jp/kankobutsu/report/937/937-05.pdf

これは3年前のレポートですが、その後どうなったか、まだ調べていません。

燃料が変われば、その燃焼に使う材料もそれに適合したものを使わなければならな い、ということでしょうが、歴史の浅い日本ではまだまだヨーロッパ先進国の経験を 学ぶ必要がありそうです。

ペレットのような乾燥燃料を使う場合には同じことは起こらないとは思いますが、今 後とも注意と対策は必要でしょう。2年前に、岩手県ではペレット燃焼灰から6価ク ロムが検出されて大きな問題になりましたが、これはペレットそのものからできたも ので、その後解決されたものと思います。
(上記訂正:岩手県でも、ペレットの6価クロムの件は「燃焼器の問題」と結論していると指摘されました。)


なお、県とは別に開発が進められていた(株)相愛によるバイオマス温風機について は、順調に進んでおり、この冬には芸西村のハウスに数台は使われることになるよう ですので、期待しています。